バカになれることは特殊能力

「バカになる」と言われると、普通はネガティブな意味にしかならないくまね。でも、バカになる、つまり、先のことは考えず目の前のことだけを考えることは、じつは人間にとって大切な能力くまよ。

もともと人生というのは本質的にダブルバインドくま。ダブルバインドというのは「右へ行っても左へ行っても辛い」状態のことくま。みんな人生のどこかでだいたいそういう苦境になるくまね。究極的には、人間には死が待っている以上、人生はどう転んでもダブルバインドなのだくま。

でも、いつか人は死ぬなんてことを考えていたら、苦しくてやってられないくまね。そこで人間は、本質的なダブルバインドから逃れるための特殊能力を、進化の過程で獲得したくま。それが「目の前のことだけを考える」能力、つまりバカになる能力くま。

人間の脳は、原始時代から現代まで、未来の予想や計画をたてるための「論理的思考能力」を進化させてきたくま。簡単に言えば頭がよくなってきたくまね。論理的思考は、マンモスを狩ったり、他人と競争する時に、とにかく威力を発揮するくま。頭がいいと、基本的には人生はうまく行くと言っていいくま。

ただし、人間が頭が良くなるように進化したことで、重大な副作用が生まれたくま。それは、人生が本質的にダブルバインドであることに気が付くことくま。それは大変つらいことくまね。頭がよくなって、まわりの状況を冷静にとらえればとらえるほど、絶望が待っているくま。

そこで人間は、頭が良くなるように進化した一方で、同時に、目の前のことだけを考える能力、つまりバカになる能力を進化させてきたくま。

バカになるとは、言い換えれば、脳の論理的思考を麻痺させることくま。そのためには2つの方法があるくま:

まず1つ目に脳の神経系を狂わせる薬物を生み出したくま。アルコール、タバコ、麻薬、覚せい剤などの化学物質は人間の歴史と切っても切れない関係にあるくま。人間は薬物と共に進化してきたと言っても過言ではないくま。

2つ目に人間は、ゲーム、家族、友人、趣味、仕事など夢中になることで、論理的思考・合理的な判断をにぶらせる能力を獲得してきたくま。自分を目の前のことにくぎ付けにするものは、判断能力を奪うのでネガティブなものとして語られる一方で、それを言い換えれば、目の前のこと以外のつらい事々を忘れさせてくれるものくま。

つまり、人間は、薬物なり行動なり、何かに依存することで論理的思考をいい具合に麻痺させながら生きるように進化してきたくま。

うつや心の調子がくずれるのは、この脳内麻痺が効かなくなるくま。バカになる能力がなくなり、冷静に世界を理解してしまうくま。死や病気や将来への不安など、普通の人がバカになって考えないことが、あたまの中から離れなくなるくま。考えたくもないのに、どうしようもないことを考えてしまうのは、麻薬が切れてしまうからくま。

いいかえれば、人間が、アルコールやタバコのほか、家族や友人や恋人に依存しなくては生きていけないのは、本質的なダブルバインドから逃れて、バカになって幸せに生きるための能力なのだくま。

もちろん、その依存が暴走してしまえば依存症になってしまうくま。心の調子が崩れると、たいていは依存症の悪化として症状が出てくるのはこのためくま。過食症、買い物依存、性的依存などは、辛いことを忘れるために脳が悲鳴を上げている状況くま。健康な人間は、ダブルバインドから逃れつつ、依存症にならない程度の、絶妙なところで依存のバランスをとっているくま。健康だとそれがあたりまえすぎて意識しないくまが、実は人間は、本当に絶妙なバランスで心の健康を保っているくま。

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